大人の発達障がいの理解と支援|特性を正しく知り、働きやすい環境をつくるために
発達障がいは子どもの頃に診断されるものというイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には社会に出てから自分の特性に気づいたり、仕事や人間関係での悩みをきっかけに診断を受けたりする人もいます。
周囲と同じように仕事をしているつもりなのに、なぜかミスが続く。人との会話がうまくかみ合わない。こうした経験を重ね、自分なりに努力してきたものの、原因が分からず悩んでいる人もいます。
成人期の発達障がいについて知ることは、本人の困りごとを理解するだけでなく、職場での接し方や業務の進め方を見直すきっかけにもなります。
今回は、大人になってから気づく発達障がいの特徴や、当事者自身の工夫、周囲ができる具体的な支援について紹介します。
成人期に気づく発達障がいの特徴
発達障がいは、生まれつきの脳機能の発達に関係する特性です。代表的なものに、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などがあります。
子どもの頃から特性が見られていても、必ずしも早い段階で診断につながるとは限りません。例えば、忘れ物が多い、集団行動が苦手、人との会話で話の意図をつかみにくいといった傾向があっても、性格や個性の問題として受け止められてきた人もいます。
学校生活では大きな問題にならなかったことが、就職してから仕事上の課題として表れるケースもあります。職場では複数の業務を同時に進めたり、明確に説明されていないルールに沿って行動したりする場面が増えるためです。
成人期に見られる困りごととしては、次のようなものがあります。
- 職場でのコミュニケーションや暗黙のルールへの対応が難しい
- 時間管理や作業の優先順位付けが苦手で、締め切りに間に合わなくなる
- 音や光などの刺激に疲れやすく、仕事の後に強い疲労を感じる
- 一つの作業に集中しすぎて、ほかの業務への切り替えが難しい
- 失敗や周囲との違いを気にして、自信を失ってしまう
こうした困りごとは本人の努力だけでは解決しにくい場合があります。周囲からやる気がない・注意力が足りないと見られ、本人も何度も同じ失敗を繰り返すうちに、自分を責めてしまうこともあります。
まずは、本人の意欲や性格だけで判断せずどのような場面で困難が生じているのかを確認することが必要です。
以下のような記事も参考にしてみてください。
発達障害に気付いたら?大人になって気付いたときの専門相談窓口 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202302/entry-10203.html
当事者自身が取り組む試み
発達障がいへの支援というと周囲がどのように接するかに注目しがちですが、一方で当事者自身も日常生活や仕事を送りやすくするためさまざまな工夫をしています。
例えば、自分がどのような場面でミスをしやすいのかを把握するため日記やメモを残す方法があります。うまくいかなかったことだけでなく問題なく進められた作業も記録しておくと、自分に合う仕事の進め方を考える材料になるでしょう。
音や光に敏感な人であれば、イヤホンやサングラスを活用したり、作業場所を調整したりすることもできます。
時間管理が苦手な場合は、タイマーやスケジュールアプリを使い、作業の開始時間や終了時間を意識できるようにする方法もあります。
リスタルでも過敏な方には耳栓の許可など、柔軟な調整を行っています。
伝える練習の取り組み方
職場では自分の苦手なことを具体的に伝える練習も役立ちます。
例として、口頭での指示だけでは内容を忘れてしまう場合は指示の内容を後から確認できるようにチャットやメモでも共有していただけると助かりますと伝える方法もあります。
最初から自分の特性を周囲に説明するのは簡単なことではありません。どこまで伝えるべきか迷うこともあるでしょう。まずは仕事に必要な範囲で困っていることと、どのような対応があれば取り組みやすくなるのかを整理してみるとよいでしょう。
また、同じような悩みを持つ人の体験談を読んだり、相談支援員や就労支援機関に話を聞いてもらったりする方法もあります。自分だけでは解決策が見つからなかったことも、別の視点から考えることで、対応の選択肢が増える場合があります。
こうした工夫は、一度取り入れればすべて解決するというものではありません。実際に試してみて、合わなければ別の方法を探す。その繰り返しが、日々の生活や仕事を続けるうえで役立ちます。
リスタルでも、業務のカリキュラムや作業指示などは、紙面やデータで確認できる形にすることを基本としています。口頭での説明だけに頼らず、後から内容を見返せるようにすることで、作業の確認や進行をしやすくするためです。こうした仕組みも、一人ひとりが仕事に取り組みやすい環境を整えるための工夫の一つです。
理解を深めるために必要なポイント
発達障がいへの理解を深めるうえで、まず知っておきたいのは、特性の表れ方は人によって異なるということです。
同じ診断名であっても得意なことや苦手なこと、必要としている配慮は一人ひとり違います。周囲からは問題なく仕事をこなしているように見えても、本人は人知れず疲労を感じていることもあります。
そのため、診断名だけで相手の行動を決めつけるのではなく、本人がどのようなことに困っているのかを聞く姿勢が欠かせません。
ここでは周囲が意識したいポイントを4つ紹介します。
1. 失敗を努力不足だけで判断しない
仕事でミスや遅れがあったときにすぐに注意するだけでは同じ問題が繰り返されることがあります。指示の内容が分かりにくかったのか、作業量が多すぎたのか、ほかの業務と重なっていたのか原因を一緒に確認することで、改善策が見つかる場合もあるでしょう。
例えば、口頭での説明が伝わりにくい人には、手順を文章や図にして渡すだけでも作業の進めやすさが変わります。
2. 本人だけでなく、作業環境も見直す
本人に努力を求めるだけでなく、周囲の環境を調整することも考えてみましょう。
静かな作業スペースを確保する、業務の優先順位を明確にする、作業手順を見える形にするなど、職場側で対応できることは意外とあります。本人がすでに使っている工夫があれば、それを無理に変えずに活用することも大切です。
3. 心理的な負担にも目を向ける
長い間、失敗や周囲との違いを指摘されてきた人の中には、自信を失っている人もいます。仕事上のミスだけを取り上げて注意を続けると、さらに萎縮してしまう可能性があります。
できたことや改善した点を具体的に伝え、安心して相談できる関係をつくることも職場での支援に含まれます。
4. 必要に応じて専門機関と連携する
発達障がいのある人への支援では、職場での取り組みと専門機関によるサポートを組み合わせることも大切です。本人の特性や困りごとについて、職場だけでなく、発達障がい者支援センターや就労支援機関、医療機関などとも情報を共有し、それぞれの立場から支援方法を考えていくことができます。
職場で気づいた変化や日々の業務での様子を専門機関と共有し、そこで得られた助言を職場での対応に取り入れる。こうした双方向の連携を通じて、本人の状況に合わせた継続的な支援を進めていくことが重要です。
JEED|発達障害者の品出し業務における合理的配慮事例
https://www.ref.jeed.go.jp/27/27019.html
実践的な支援の考え方
職場での支援を考える際は、特別な対応を一から用意することだけが方法ではありません。普段の業務の進め方を少し見直すだけでも、仕事のしやすさが変わることがあります。
例えば、指示を出す際には適宜対応してくださいといった曖昧な表現を避け、作業内容や期限、優先順位を具体的に伝える方法があります。口頭で説明した内容をメモやチャットにも残しておけば、後から確認できます。
また、複数の仕事を同時に依頼するのではなく、一つずつ進められるようにする、作業の区切りごとに確認する時間を設けるといった方法もあります。
環境などの配慮事項
感覚的な負担がある場合は、座席や照明、周囲の音などを見直すことも検討できます。
こうした対応は、発達障がいのある人だけに役立つものではありません。指示が明確になることで、誰にとっても仕事の進め方が分かりやすくなる場合があります。
一方、支援する側がすべてを抱え込む必要はありません。本人の希望を確認しながら、職場でできることと専門機関に相談した方がよいことを分けて考えることも大切です。
無理に一度ですべてを解決しようとせず実際に取り入れた対応を振り返りながら、本人に合う方法を探していきましょう。
おわりに
大人になってから発達障がいに気づく人の中には、長い間自分の努力が足りないからうまくいかないのだと思い込んできた人もいます。
しかし、仕事で困難を感じる理由は本人の能力や意欲だけで説明できるものではありません。指示の伝え方や作業環境、周囲とのコミュニケーションなど、職場側にも見直せる部分があります。
リスタルでも、作業指示のデータ化など、業務を進めやすくするための取り組みを行っています。働く人それぞれの得意・不得意を踏まえ、どのような環境なら力を発揮しやすいのかを考えることは、日々の仕事を支えるうえで欠かせません。
発達障がいへの理解は、知識を身につけるだけで終わるものではありません。実際に相手の話を聞き、必要な工夫を一緒に考えることが大切です。
そうした日々の関わりが、安心して働ける職場づくりにつながっていくでしょう。